自制心のメカニズム

人文科学

私たちは、多かれ少なかれ理想や目標を持って、それを叶えたいと願っています。

しかし、それを実現するのはほんの一握りの人たちで、大多数の人は理想や目標を叶えられずにいます。

では、目標を達成するには生まれつき特別な才能が必要なのかというと、それは違います。

また、目標を達成する能力は誰でも後天的に鍛えて身につけることができます。

とはいえ、多くの人は禁煙や禁酒、ダイエットや資格試験のための勉強など、目標を掲げ、やるべきこともわかっているのに、それを成し遂げることができないのはなぜだと思いますか。

その鍵を握るのがセルフコントロール、つまり『自制心』です。

自制心は個人により強弱の差はあるものの、誰でも持っているものです。

また、ある分野では卓越した自制心を発揮して目標を達成している人なのに、別の分野に関してはからきし自制心が働かないケースも少なくありません。

例えば、一流のスポーツ選手などは卓越した成績を上げるために、自制心を活用して常人では耐えられないようなトレーニングを行い、本番のプレッシャーも跳ねのけ、栄光を手に入れています。

しかし、そんな人が金銭や女性関係に関しては自制心が働かず、大スキャンダルと起こしたりということは珍しくありません。

つまり、ある分野で強い自制心が発揮できたとしても、別の分野では自制心が役に立たなかったり、あるいは自制心が弱かった人が強靭な自制心を身に着け逆転をすることもあれば、自制心を失い没落してしまうこともあるのです。

では、自制心についてもう少し掘り下げてみてみましょう。

自制心というと、その人に備わった人格のようなイメージを持つ人もいるかもしれませんが、真実は全く違います。

例えるなら、自制心は筋肉のようなものなのです。

アメリカの社会心理学者の実験で、2つのグループに分け、一方には誰もが喜ぶ甘いものを食べさせ、もう一方には誰もが嫌がる酸っぱいものを我慢しさせて食べさせました。

その後、2つのグループに難解なパズルに挑戦させたところ、酸っぱいものを食べさせられたグループの方が圧倒的に早くパズルを解くことを諦めたのです。

これは、難解なパズルに挑む前に、酸っぱいものを我慢して食べることに自制心を使ってしまったため、その疲労でパズルで自制心が使えなくなったということです。

これは、フィットネスジムなので、激しい筋トレをした後は普段なら持ち上げられる重さでも、持ち上げることが困難になる状態と似ています。

ですから、大統領になるような卓越した自制心の持ち主でも、日中の激務で自制心を使い果たしてしまうと、禁煙をしようと誓っても仕事が終わったあとに自制心は疲労しきっているため、タバコを吸ってしまうのです。

ただし、自制心は筋肉と同じで休息を取ることで復活しますので、十分な睡眠や、適度な遊びなどで、心を癒やすことによりここぞという場面で自制心を発揮できるようになるでしょう。

また、自制心は筋肉と似ているため、鍛えれば強くなりますし、何もしなければ弱くなります。

そのため、日頃から自制心を使って、何かに挑戦したりしている人は、その他の分野でも規則正しい生活が送れたりします。

逆に、何にも自制心を使わない生活をしていると、いざ自制心が必要な場面で易きに流れていってしまうわけです。

他にも、自制心が弱っている場合でも、モチベーションを上げることで自制心の疲労を補うこともできます。

先程の例で言えば、酸っぱいものを我慢して飲んだ後に難解なパズルを解かされたとしても、「これが解ければ100万円をあげます!」などの条件が加われば、すぐに諦めていた人が長時間頑張ったりできるということです。

また、自制心を使う目標についても単純ではありません。

心からやりたいと思う目標なのか、やらなければならないという義務的な目標なのかによって、自制心の使い方や補強の仕方も変わってきます。

あらゆることを俯瞰して、総合的に自制心を上手に使いこなす方法については、また改めて詳しくお伝えいたします。

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